醤油と煎り酒とのあいだ

昨日、テレビで「煎り酒」が取り上げられていたんですが、「幻の調味料」とかいうのはどうだろうと。

「煎り酒」は、室町時代頃から江戸中期くらいまで、醤油が広まるまで使われていた調味料のひとつで、
日本酒に梅干し、鰹節を入れて半量くらいまで煮詰めたシンプルなものです。
塩、醤油、みりんを入れるレシピもあります。

何度か自分で作ってみて感じたのは、もともとの「味」がよくわかならいということで、
日本酒にしても、梅干しにしても、鰹節にしても、当時と今ではかなり違うものになっているのでは無いかと。
食文化の難しさは、エンテツさんがいつもいうように、
食べれば無くなると言うことで、実際のところがよくわからないことが多いです。
文書からだけではわからない。
連続性もありますが、断絶もある。

最初、通常の速醸酛の日本酒で作ってみたんですが、どうも味が決まらず、
ためしに生酛で作ってみるとどうもこちらの方がしっくりと味がまとまるようで、
それ以来、山廃か生酛で作るようになりました。

鰹節は生臭さが気になるので、使わずに、昆布を入れて煮詰めるようにしています。

江原恵さんの、「江戸料理史・考」や、「料理物語・考」を読むと、
実際に江戸期の料理を何度も試作して考えているんだなぁということがよくわかります。
味覚の変化の歴史を丁寧に追っているので、こんにち当たり前に思っているモノが
そうでなかったりするのが面白いです。
醤油と煎り酒とのあいだにいろんなものを見ておられたんだなぁと。